2010.09.08(水)
映画 「Last Train Home」
毎年チャイニーズ・ニュー・イヤーになると1億3000万人もの人たちが、いっせいに中国の工業都市から自分の故郷へ里帰りをする。
映画によると、一時に起きる人間の移動の中では、世界で一番大きな現象なのだそうだ。
しかしもっとショッキングなのは、それだけの人たちが故郷を離れ、出稼ぎに出ていると言う事実だ。
映画「Last Train Home」は、中国の田舎から出稼ぎに出ている家族を3年に渡って追ったドキュメンタリー・フィルムだ。
Zhang ChanghuaとChen Suqinの夫婦は、15年前に四川から広州に働きに出ていた。ミシンで衣料品を縫うのが彼らの仕事だ。毎日毎日、決められた同じことを繰り返すだけ。
彼らには高校生になる娘と中学生の息子がいる。娘が生まれてすぐに働きに出かけた彼らは、子育てを妻の母親、つまり子供達にとってはおばあちゃんに任せている。彼ら家族が一緒になれるのは、一年に一度、チャイニーズ・ニュー・イヤーのホリデーだけだ。
この帰省の状況がすさまじい。日本の帰省ラッシュなんてものではない。よくこんな状態でちゃんと皆自分の電車に乗って故郷へ帰れるものだと思う。それでもこの日を皆楽しみにして生活をしている。だから何が何でも帰りたい。そんな人たちでいっぱいだ。
しかし田舎での生活も厳しい。子供達はおばあちゃんの農業を手伝いながら生活をしていた。
親は少しでもいい生活を子供達にさせてあげたくて働きに出ている。そして親は子供達にこういう暮らしをしなくていいように、しっかりと勉強をするように、と口をすっぱくして子供達に語る。しかし子供達にとって、一年に数日しか会わない親の言うことは素直に聞くことができない。
親が子供のためにしていることが、子供には伝わらない。やがて上の娘は学校を辞め、親と同じく都会へと働きに出かける。
彼らが作っているものは欧米に向けて輸出される衣料だ。安い賃金で働かされ、安い価格で出荷される。そしてそれらは海外で高値で売られ、利益は欧米の一部の人たちの懐に納まる。
資本主義の末端では、夢を見たくても現実に押しつぶされ、目の前の仕事をこなすことだけで精一杯の毎日を送っている人たちで溢れかえっている。それでも自分の子供だけはそんな思いをさせまいと願うが、家族がろくに一緒に暮らせない状況から家族崩壊が起こる。
また目まぐるしい速さで変わっていく中国で、若い子達と年配の者達の価値観やものの考え方の違いが顕著に現れているのが興味深い。
映画はたった一家族を追ったドキュメンタリーだ。しかしチャイニーズ・ニュー・イヤーに家を目指す1億3000万人にこんなストーリーがあるのかと考えると、いたたまれない思いでいっぱいになった。
<Last Train Home Trailer>
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それでは、また。良い一日を!
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しかしもっとショッキングなのは、それだけの人たちが故郷を離れ、出稼ぎに出ていると言う事実だ。
映画「Last Train Home」は、中国の田舎から出稼ぎに出ている家族を3年に渡って追ったドキュメンタリー・フィルムだ。
Zhang ChanghuaとChen Suqinの夫婦は、15年前に四川から広州に働きに出ていた。ミシンで衣料品を縫うのが彼らの仕事だ。毎日毎日、決められた同じことを繰り返すだけ。
彼らには高校生になる娘と中学生の息子がいる。娘が生まれてすぐに働きに出かけた彼らは、子育てを妻の母親、つまり子供達にとってはおばあちゃんに任せている。彼ら家族が一緒になれるのは、一年に一度、チャイニーズ・ニュー・イヤーのホリデーだけだ。
この帰省の状況がすさまじい。日本の帰省ラッシュなんてものではない。よくこんな状態でちゃんと皆自分の電車に乗って故郷へ帰れるものだと思う。それでもこの日を皆楽しみにして生活をしている。だから何が何でも帰りたい。そんな人たちでいっぱいだ。
しかし田舎での生活も厳しい。子供達はおばあちゃんの農業を手伝いながら生活をしていた。
親は少しでもいい生活を子供達にさせてあげたくて働きに出ている。そして親は子供達にこういう暮らしをしなくていいように、しっかりと勉強をするように、と口をすっぱくして子供達に語る。しかし子供達にとって、一年に数日しか会わない親の言うことは素直に聞くことができない。
親が子供のためにしていることが、子供には伝わらない。やがて上の娘は学校を辞め、親と同じく都会へと働きに出かける。
彼らが作っているものは欧米に向けて輸出される衣料だ。安い賃金で働かされ、安い価格で出荷される。そしてそれらは海外で高値で売られ、利益は欧米の一部の人たちの懐に納まる。
資本主義の末端では、夢を見たくても現実に押しつぶされ、目の前の仕事をこなすことだけで精一杯の毎日を送っている人たちで溢れかえっている。それでも自分の子供だけはそんな思いをさせまいと願うが、家族がろくに一緒に暮らせない状況から家族崩壊が起こる。
また目まぐるしい速さで変わっていく中国で、若い子達と年配の者達の価値観やものの考え方の違いが顕著に現れているのが興味深い。
映画はたった一家族を追ったドキュメンタリーだ。しかしチャイニーズ・ニュー・イヤーに家を目指す1億3000万人にこんなストーリーがあるのかと考えると、いたたまれない思いでいっぱいになった。
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