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モーストリー・モーツァルト 「ドン・ジョバンニ」

リンカーン・センターの、もう一つのフェスティバル「モーストリー・モーツァルト」が始まった。

このフェスティバルは、”Mostly Mozart”というだけあって、モーツァルトの音楽を中心にプログラムが作られている。でも”Mostly”というのがミソで、モーツァルトの音楽だけでなく、他の作曲家のものも混じっており、今年はモーツァルトの加え、ストラビンスキーの作品も数多く揃えた演目となっている。


先日このモーストリー・モーツァルトで今年私が楽しみにしていたブダペスト祝祭楽団による「ドン・ジョバンニ」を観てきた。

このオペラの見所は、何といっても指揮者Ivan Fisher!

"Staged concert"と書かれていたが、どんなステージであったかというと...

まずはモーツァルトの第一人者の指揮者であると言われる、Mr. Fischerの音はすばらしかった。ドン・ジョバンニは、キャラクターの個性により音楽がクルクル変わるのだが、彼が指揮する音楽は、それを見事に表現していた。う~む。来週彼の指揮するコンサートがあるが、行けるものなら行きたい...彼の奏でる音楽は、とてもイキイキとしていて、躍動感に溢れつつ、微細にも音に対するケアが行き渡っている。そんな音であった。

舞台はいたってシンプル。

舞台上には2つの大きなボックスがあるだけ。歌手は現代の服装で登場。それに16人の、白っぽいグレーに塗りたくられたダンサー兼アクターが舞台の上で表現する。
Don Giovanni 3-1

ダンサー/アクター達は、ストリートパフォーマーによく見られるような、マネキンのように静止した形で舞台に現れる。そして時たまポーズを変える。そして場合によっては、歌手のためのモチーフになったり、と七変化をする。

去年、ミラノ、スカラ座のニーベルングの指環をオペラ映画で観たのだが、その時も舞台はダンサーとのコラボレーションだった。こういうシンプルで、ダンサーとのコラボレーションの舞台が今のヨーロッパの流行なのだろうか?

歌手は、メトの歌手を観慣れているせいか、正直言ってちょっとムラがあったように思えた。特にドン・ジョバンニ役の彼は、ちょっと優男風で、ドン・ジョバンニ役にはぴったりの風貌だったが、声がイマイチであった。それに比べるとLeporello役の彼のほうが、声が出ていてよかったように思う。

女性歌手では、ドンナ・アンナ、ドンナ・エルビーナが健闘していたように思う。この指揮で、もう少し歌手がよければ、すごくいい舞台になったかも。
Don Giovanni 2-1

ドン・ジョバンニのクライマックスでは、白塗りしたアクター達が勢ぞろいで、石像に連れられて地獄に落ちるシーンはなかなか見ごたえがあった。
Don Giovanni 1-1


メトのお金をかけた大プロダクションと手の込んだコスチュームの舞台を見慣れていると、こういうシンプルな舞台はとても新鮮に感じる。

ヨーロッパの小さな舞台では、こんなプロダクションの舞台を沢山観ることができるのだろう。

これほど長い年月をかけて舞台にされているのに、まだまだいろいろと進化しているオペラ。やっぱり時代に合わせて進化/変化があるからこそ、時代を経てもこんなに愛されるのだろう。

さすがヨーロッパ、しかもモーツァルトを愛した国の舞台だけあって、とても演劇的で、想像力がたっぷり詰まった舞台であった。

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リンカーンセンター・フェスティバル 「魔笛」

ニューヨークの夏の舞台芸術の祭典「リンカーン・フェスティバル」。

毎年パワーアップしているのだが、本当に今年の演目は面白そうなのばかりで、何を観ようか選ぶのに苦心した。
(というか、まだいくつかどうしようか、うだうだ迷っていたりする)

その一環で行われた、名演劇監督のピーター・ブルック演出の、モーツァルトの「魔笛」を観に行ってきた。

ずぼらな私は、ピーター・ブルックの演出、というだけで、何も調べずに行ったのだが、これが功を奏した。


場所は、John J. Collegeのシアター。

大学のシアターで、オーケストラはどうするのかな~、なんて暢気なことを考えて行った私。

ところがこのオペラは、歌手とピアノだけで上演されるものであった。

舞台はいたってシンプル。

竹の棒が沢山立っているだけ。
Magic Flute 2-1

歌手の衣装は現代の普段着。

そして歌は、肝心のアリアとかはずせないものはちゃんと歌うが、所々がセリフになっている。面白いのは歌はドイツ語だけれど、セリフはフランス語になっていること。
Magic Flute 3

「魔笛」というと、いろいろなエレメントがごっちゃり混じって、見所がてんこ盛り、みたいなオペラだが、このプロダクションは、とてもシンプルで、見せ所がちゃんとわかるようにできている。

しかもところどころがセリフなので、オペラ自体も短く(幕間ナシ2時間ちょっと)、暑い夏の夜にさらりと観るにはほどよいオペラであった。

Magic Flute 1-1

「魔笛」をピアノ伴奏で、というのがどんなものかと思ったが、またこれがよかった。さすがモーツァルトの作曲した音楽だけある。ピアノでも十分楽しめる、というか、これはこれでまた音楽が引き立ち、なかなか面白い世界だった。(それにしてもピアノの方は出ずっぱりでさぞかし大変だったと思う)


この舞台を観て、オペラって、本当にいろいろな楽しみ方があるものだ、とつくづく思った。

こんなに演りつくされたオペラでも、このような演出の仕方があるとは。

あ~。だからオペラはやめられない。


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今シーズン最後のオペラ 「オルフェオとエウリディーチェ」

ついこの間、新シーズンが始まったと胸をときめかせていたと思ったのに、もう2010-2011シーズンが終わりを告げる。

シーズン最後に観たのは、グルックの「オルフェオとエウリディーチェ(Orfeo ed Euridice)」。

Orfeo 9

実はこの作品、前にも観ているのだけれど、なぜか記憶に残っていない。何度か観ているはずなのだが、印象が薄く、どんなオペラかと聞かれると答えられない。だから今回はちゃんと観て、このオペラをものにしようと思ったのがこの演目を今シーズン選んだ理由。


このオペラはウィーン版とパリ版があるが、2007年にMetにお目見えしたこのプロダクションは、1762年のウィーン・バージョン。作曲家グルックが意図したものをなるべく忠実に表現しようとした試みからきている。


ストーリーはギリシャ神話からきている。

妻を亡くしたオルフェオは悲観にくれ、神々に妻を返して欲しいと懇願している。そして妻を取り戻せるなら暗黒の洞窟の中へでも行くと決意を語ると、愛の神が姿をあらわす。

愛の神はジュピターがオルフェオに同情し、黄泉の国を流れる川を渡ることを許した、と告げる。ただし、彼女を地上に戻すまで決してその姿を見てはならず、この約束も彼女に伝えてはいけない、という。

オルフェオは黄泉の国へ行き、エウリディーチェがあらわれる。

愛の神との約束で、彼女の姿を見もしないオルフェオに、エウリディーチェは自分が美しさをなくしたのでは、と疑問をなげかけ、夫の愛が冷めたのではと問い詰める。オルフェオはあまりの試練に耐え切れずエウリディーチェのほうを振り向くと、エウリディーチェは息絶えてしまう。オルフェオは後悔に苛まれ、妻を追って自分も命を絶とうとする。

そこへ愛の神が登場し、オルフェオの愛は十分に証明された、と告げ、エウリディーチェは息を吹き返す。

とまぁ、こんなストーリー。


さて、このオルフェオ役はもともとカストラート(男性を去勢することで変声期をなくし、ボーイソプラノの声質や音域で歌えるようにした人たち)を想定して書かれているものの、現在ではカストラートは存在せず(のはず)、そのためカウンターテナーかコントラルトによって上演される。

今回のMETでは、現在活躍するカウンターテナーでは指折りのデイビット・ダニエルズが今回もオルフェオを歌った。(私は2007年に彼の舞台も観ているが、あまり記憶になかったのでもう一度彼を観たかったのもこの演目を選んだ理由のひとつ)

Orfeo 3

彼の声はとても美しく響き、あんな風に嘆かれては、愛の神もなんとかしてあげたくなっちゃうのも納得の歌声。それにしても、あんなに高い声でありながら、スタイリッシュで、力づよく、心に響くように歌えるのは彼に与えられたギフトだと思う。

さて、1幕目で妻を亡くしたオルフェオが嘆くシーンの背景では、3段になったバックグラウンドに沢山のコーラスがずらっと並ぶ。このコーラスの方々はそれぞれが違った衣装をつけているのだが、よ~く観ると歴史上の人物が沢山いる。

Orfeo 11

いい写真が見つからなかったのでよくわからないかもしれないが、ナポレオンや、ジョージ・ワシントンやらが並んでいらっしゃる。冥界の話なので、過去の人たちが並んでいる、ということか?

そんな中で、一人、上半身裸の男性がいた。ネイティブ・アメリカンの格好をされた方で、かなりがっちりとした体格をしておりそれだけでも十分人目を引くのだが、オペラグラスでコーラスを見ていた私は彼の体つきをみて、その後そっちが気になって、肝心のオルフェオの嘆きがおろそかになってしまうほどだった。この方の胸はそんじょそこらの女性の胸よりも豊かなのだ。オーケストラ席で見ていたら、きっと本当に気になって、彼ばかり見ていたかもしれない(笑)。

そして嘆くオルフェオの前に現れた愛の神。

Orfeo 4

ピンクのTシャツにチノパン。天井から釣り下がって登場。この愛の神の衣装は学芸会の延長みたい。愛の神役のLisette Oropesaの声はとてもよかったので、この衣装はちょっとかわいそうだった。

でも実はこのコスチュームデザインは、80年代の寵児アイザック・ミズラヒなんですけど。

もっと言うと、このオペラはダンスシーンが満載なのだが、奇才なのを狙ってなのかはよくわからないけれど、なんでコレ?っていうのがあった。
Orfeo 8-1

でもさすがにエウリディーチェの衣装は美しかった。
Orfeo 5-1

エウリディーチェ役のKate Royalもエウリディーチェにピッタリ。エレガントでグレースフルな感じ。こんな妻であれば、めそめそといつまでも嘆くオルフェオの気持ちもわからなくはない。

Orfeo 1

前回の「ワルキューレ」がすごかったので残念ながらちょっとかすんでしまったが、音楽は美しく、歌手達もよく、しかもコーラスもとても美しく、今シーズン最後のオペラを堪能した。

あ~ん、これでしばらくオペラはお休み。

と思いきや、今年の夏のリンカーン・センター・フェスティバルも、モーストリー・モーツァルトも見たい演目が満載!! お休みなんて暢気なことを言っていられない。夏の間も忙しくなりそうな予感がする。


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ワーグナーに乾杯! オペラ「ワルキューレ」

オペラシーズンもあと残りわずか。

今シーズンのMETは本当にどれも素晴らしく、このままずっとシーズンが終わることなく続いて欲しいと切望するほど。

でもシーズン終わりになると、さらに目玉となるオペラがやってきて、オペラファンは嬉しい悲鳴をあげながらいそいそとオペラ座へ足を運ぶ。このシーズン最後を迎えた、ふわふわとした感じは、これはこれで好きな時のひとつではある。


待望のワーグナー(Richard Wargner)の「ワルキューレ(Die Walkure)」がいよいよ開幕となった。

Walkure 9


ワーグナーの大作「ニーベルングの指環」は、”序夜と3日間のための舞台祝典劇”と題されたオペラ。「ワルキューレ」はこの大作の第一日にあたる作品である。

今シーズンはじめに、序夜である「ラインの黄金」がMET新プロダクションでお目見えしてワーグナーに酔いしれた私は、早く次を観たくて観たくてたまらなかった。

そしてとうとう待ち焦がれていた「ワルキューレ」がやってきた。


上演時間は3幕で3時間50分。夕方6時半にはじまり、多少の遅れもあって終わったのは11時45分頃。それでもワーグナーの魔法にとりつかれた私には、あっという間の3時間50分であった。あ~、もう一回みたい!!


ワルキューレは「指環」の中でももっともポピュラーな作品だ。愛し合う男女と、愛の深さゆえに、人々(神々)の運命も変えてゆく。そして「ワルキューレの騎行」といった聴き所もある。

長いオペラではあるが、音楽にクリックすると本当に酔いしれたようになり、時間の長さが苦痛にならない。大丈夫かな、と思いながら、今回はAL君も一緒に観に行った。


まずは1幕目。

ずっと体調を悪くしていたジェームズ・レヴァインが、オーケストラ・ピットに入ると嵐のような拍手がなった。本当にワルキューレを指揮できるのか心配されていたが、彼の指揮で聴けて本当に嬉しい。

「ラインの黄金」に続いて今作もモダンな舞台。

木琴のようなプランクに嵐や雪などが映し出され、それがだんだん形を変え、フンディングの家に変わっていく。ハイテクを駆使した舞台。前作に引き続き、これらのプランクがガタン、ガタン軋む音が気になるのだけれど、まぁ、ちゃんと動いているのだから、この音は大目に見るしかない。

そしてジークリンデ(Mary Ann McCormick)とジークムント(Jonas Kaufmann)が登場。

Walkure 5


このジークムントのJonas Kaufmannが実によかった!!

最初の立ち上がりは声がガラガラだし声量もなく、対するジークリンデのMary Ann McCormickが声量たっぷりで押され気味に感じたのだが、Kaufmannの立ち居振る舞いは、私の想像するジークムントそのもの。きゃ~っ。なんてカッコいいの。オペラグラスで彼を追いまくって観てしまった。

そしてそのうち、声がスコーンと抜けてみるみるうちに魅力的な声に変身。いやぁ、彼はジークムントのために生まれてきたというか、ジークムントは彼であったのではないか、と思わせるようなはまり役。とにかく、彼の演技はジークムントそのものを見ているかのよう。

彼の声は多分METで、しかもこのようにオーケストラの音が大きいワーグナーを歌うにはギリギリの声量なのだと思う。でも声量が少ないからといって歌がまずいという訳ではない。彼のジークムントは、本当にアーティスティックなジークムントだったと思う。

私がもう一度このプロダクションを見たいのは、ひとえに彼のジークムントをもう一度観たいから。いやあ、本当に彼にくぎ付けでした。

ジークリンデのMary Ann McCormickもとてもよかった。さすがMet。キャストはばっちし。


2幕目で、ヴォータン(Bryn Terfel)とブリュンヒルデ(Deborah Voight)が登場。

Walkure 8

ヴォータン役のターフェルは前作からこの役を引き続き歌っている。ターフェルのヴォータンはジェームス・モリスで聴きなれているMETファンの我々にとってはちょっともの足りないように感じるかもしれないが、見た目はヴォータンぴったり。

でも今回一番輝いていたのはデヴォラ・ヴォイトのブリュンヒルデ。本当に素晴らしかった。

ヴォータンは、女神エルーダと通じて9人の娘を作った。その一人ブリュンヒルデは彼の一番のお気に入りで、父に忠実な娘であった。

2幕目でブリュンヒルデが登場し歌う、”ホーヨートーホー!ホーヨートーホー!(Hojotoho! Hojotoho!)”は勇ましく声も伸びがあり、力強い。

そしてヴォータンの妻、フリッカが登場。

Walkure 4

フリッカは婚姻を司る女神。

彼女はジークムントとジークリンデが恋に落ちたことに激怒している。この二人はヴォータンが人間女性に産ませた子たちで、兄妹であったのだ。しかもジークリンデは人妻であり、夫フンディングが「不倫」をフリッカに訴え、フリッカは、ジークムントを倒すことをヴォータンに迫る。(ヴォータンとフリッカには子供がいない)

このフリッカ役のStephanie Blythがまたよかった。彼女の役はなぜか終始椅子に座ったままであったのだが、とても存在感があり(体がデカイというだけでなく)、外で女を作り子供を孕ませるヴォータンに対する苦悩や怒りが座ったままなのに、明確に演じられ、歌われていた。存在感たっぷり。あんな風に迫られたら、どんなに強い男でも負けてしまうだろう。


フリッカにジークムントを倒すことを約束させられたヴォータンは、自分の息子であるジークムントのことを愛していた。しかしフリッカには逆らうことが出来ず、自分に忠実な娘ブリュンヒルデにジークムントを倒すことをゆだねる。

父の本音を知るブリュンヒルデは当惑する。

しかし父の命令に背くわけにも行かず、ジークムントのもとへ行く。

しかしジークムントとジークリンデの愛の深さに心を打たれたブリュンヒルデはヴォータンの命令に背き、ジークムントを守ることを決める。


フンディングとジークムントの決闘で、ブリュンヒルデがジークムントの加担しようとするも、ヴォータンがやってきて彼の剣(ノートゥング)を打ち砕き、ジークムントは倒れる。ブリュンヒルデはすばやくジークリンデを馬で連れ去る。


3幕目。

待ちに待った「ワルキューレの騎行」。これを生でAL君に聴かせたくて、この作品を一緒に観に行くことにしたのだ。

幕が開き、ヴァルキューレたちが「ホーヨートーホー」と歌って現れる。今回の舞台では、少しづつヴァルキューレたちが現れるのではなく、8人が全員横に並んでいっせいに登場する。

Walkure 6

この写真のように、プランク一つ一つが馬に見立てられて、シーソーのように前後を揺らしながら8人が横並びで出てきて、そのうち一人ひとりが滑り台のように下に落ちていくのだが...(そう、まさしくシーソーと滑り台のコンビネーション)

この演出はイマイチだった。というか、このプロダクションの中で見事滑っていたように感じた。

まずシーソーのようなギッコンバッタン。勇ましい乙女たちの表情をオペラグラスで見ると、怖がっているような人、ちょっと小ばかにしたような笑いをかみ殺しながらギッコンバッタン人などが見受けられた。

そして、ハプニング発生。

ステージ向かって左端にいたヴァルキューレがすべり落ちたとき、”ドスン”というものすごい音を立てて、滑り台と、ステージの狭間に落ちてしまった。かなりスピードを出して落ちるから、相当痛かったと思う。(音も本当にすごく響いた)

ステージ脇だったため、彼女は落ちた後、なんとかステージに這い上がり、すぐに袖に退場していった。

しばらくステージでは7人のヴァルキューレで歌っていたが、そのうち時を見計らって彼女がステージに戻ってきた。それを見たMETの聴衆は、こともあろうか彼女に盛大な拍手を贈った。(ALくんも拍手をしていた。)あのね~、気持ちはわかるのだけど、まだヴァルキューレの音楽が続いているんだよ~。こんなところで拍手したら音が聴こえないじゃないの~っ。

NY Timesによると、ブリュンヒルデのデヴォラ・ヴォイトも初演でプランクから滑り落ちるというハプニングがあったようだが、この舞台、かなりハラハラもののようだ。歌手達も命がけで舞台で演じなければいけないので大変だ。

この場面は興ざめ。

さて、ブリュンヒルデがジークリンデを抱えて登場する。ジークリンデは最愛のジークムントを失い、生きる希望をなくしているが、ブリュンヒルデに子供を宿していることを伝えられ、生きる決意をする。

彼女を一人逃がし、ブリュンヒルデは怒りまくる父ヴォータンと対峙する。

ブリュンヒルデは、自分の背信はヴォータンの真意を汲み取ったためだと訴えるが、背信は背信。処罰を与えないわけには行かない。

ヴォータンは彼女から神性を奪い、眠りにつかせる。ブリュンヒルデの願いで、周りに火を放ち、臆病者は決して近づけないようにはからう。

次作を暗示する”ジークフリートの動機”が反復され、横たわるブリュンヒルデが火に包まれて幕となる。
Walkure 7

実はこの最後の感動的なこのシーンの演出もちょっと?ものであった。

写真のようにブリュンヒルデのボディ・ダブルが逆さづり状態になるのだけれど、ヴァルキューレの二の舞のように滑り落ちたりしないだろうか、と余計な心配が働き、気が気じゃなかった。

このシーンでは、「ラインの黄金」で出てきたのローゲのテーマは流れるし、感動的なシーンなのに残念だ。このシーンでの炎はライトでの演出。ラインの黄金のような煙モクモクの演出のほうが、リアリティがあって個人的には好きだった。


しかしOver All、素晴らしい音楽、歌であった。ハイテクを駆使した舞台は素晴らしい!(特にオープニング)と思うところと、なんじゃこりゃ、というのに分かれていたが、これはこれで楽しめた。

そしてワーグナーは聴けば聴くほど新しい発見に溢れる。今回はライトモチーフが出てくるたびに誰を暗示しているのかが見えて、本当に楽しかった。ワーグナーがちりばめているトリックが少しづつわかりはじめた喜び。でも奥はまだまだ深く、入り口にようやくたどり着いたと言う感じか。

来シーズンの「ジークフリート」と「神々の黄昏」が今から楽しみでならない。


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心が壊れれていく... ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」

ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」は、私の大好きなオペラのひとつ。

なんと言っても、あの狂乱の場がたまらない。マリア・カラスのCDで聴くこのシーンは、なんど聴いても魂が揺さぶられる。

もともと大好きなオペラではあったが、2007年にナタリー・デセイのルチアを観て、あまりの素晴らしさに、私まで狂乱しそうになった。

あんな舞台は今まで観たことがなかった。

あの時の舞台の話を書くと長くなるので止めるが、彼女の狂乱の場は圧倒的だった。目がうつろで、ふわふわとこの世と別の世界をさまよう姿。人の心がショックで狂い、崩れていくさまを目の当たりにした、すごい舞台だった。

もちろん彼女の歌は、マリア・カラスで慣らしていた耳ですら、引けを取らなかった。そんな鬼気迫る迫力ある舞台で、とにかく”すごい”、の一言だった。私はその年、2回も彼女の舞台を観に行った。

(興味のあるかたはこちらこちらと>こちらをどうぞ。デセイの2007年9月22日、METオープニング・ガラのステージです)

月日が経ち、彼女がまた「ルチア」で舞台に戻ってくる。そうとなれば期待せずにいられようか。

***

大震災の前、3月8日の舞台を観に行った。
Lucia 6

あれから1ヶ月以上も経ってしまったので、どこまで鮮明に覚えているかわからないが、備忘録として、思い出せる限り書きとめようと思う。

***

さて、今回のデセイはどうだったか。

3年前の彼女に比べ、声がトーンダウンしてしまった感は否めなかった。

前回の舞台の彼女は絶頂期で、声は本当にパワフルで、豊富な湯水がこんこんと流れ出るかのように、体中から溢れんばかりの豊かな声が延々と途切れることなく湧き出てくるかのようだった。

さらに彼女は女優もやっていたから、演技と歌の絶妙なタイミングと、ここまでやるか、というくらい、一つ一つの彼女の動きと歌が計算されつくして演じ歌っていた。

例えば狂乱の場では、ベールをちぎりながら歌うのだが、ちぎるタイミングが歌とは微妙にずれている。(先ほどあげたビデオの3つめ参照)ただでさえこなすのが難しい歌を歌いながら、ここまで微細にわたる演技。この人、普通じゃない。すごすぎる。とにかくありえない演技と歌で、鳥肌が立ちっぱなしだった。

今回のデセイは、それに比べ、すごくトーンダウンしたルチアだった。前回の舞台での1幕目のはじけるような若さと無垢な明るさは、もっと落ち着いたものに代わり、少し内向的な感じのルチアだった。
Lucia 1

彼女の声が変わったことを受けてなのか、それとも演出でそう変わったのか(でもタイムズでは、前回と全く同じ振りにしたと書いてあったから、やっぱり彼女の演技のせいか)はわからないが、少なくとも私にはそう感じられた。

前回のルチアと今回のルチアを比べると、歌唱では確かに前回のルチアのほうが勝っていた。あんな舞台は二度とは観られないだろう。

でも、ルチアという女性を考えた時、私の想像するルチアに近い人物像は、今回のルチアであった。

愛する男性と結婚の約束まで交わしながら、彼が裏切ったと騙され、家の存続のために別の人と結婚させられ、その結婚式で、彼の裏切りはウソで、でも自分は結婚の誓約書にサインをしてしまった... 
Lucia 2

絶望が彼女の心を引き裂く。そして現実と幻想のなかでさまよい、わからなくなる。
Lucia 4

こういう女性は少しトーンダウンした、内に強いものを秘めた女性像を想像するのだが、今回のルチアはそいう感じだった。前回のルチアは、ちょっと明るすぎて、こういう女性だったら、逆境も強くたくましく乗り切れちゃうんじゃないの?という感じがしたので、今回のほうがルチアに対する感情移入はすんなりとできたと思う。
Lucia 5

それから、キャスト。エドガルド役の Joseph Calleja。彼の伸びるような甘い声。とてもよかった!このオペラはテノールの出番が他のオペラと比べて少ないので、彼の歌声がもっと沢山聞けなかったのは残念なくらい。

ルチアのお兄さんEnrico役のLudovic Tézierも、レイモンド役のKwangchul Younもはまり役。今回はルチア以外の役もすべてが当たりだった。

これだけのキャストが揃っているというのは、本当にすばらしい。

***

大好きなルチアをもう一度観に行こう、と思っていたのだが、大震災が起こり、気が付いたらこの公演が終わってしまっていた。

デセイのルチアは、もしDVDになったら絶対に買おう!と心に誓っている。できれば2007年版(こちらはデセイの絶頂期版)と2011年版(脇のキャストも最高)と両方欲しい。


***

このルチア、愛している人と結ばれることができず、心に大きなショックを受けて狂ってしまい、最後には死に至ってしまう女性の話。いわば”愛死”のストーリー。私はこういうことってあるのか、と以前は懐疑的だったが、やっぱりこういうことってあるのかも、と思うようになった。

今回の大震災で、つくづく思った。大きなショックを受けた場合、心に受けた傷を癒すことは難しい。

一度大きなことを体験してしまうと、もう二度と同じ自分には戻れない。

人間の心って、繊細だ。

それでも大抵の人は、そこから立ち上がり、バネにして、立ち向かう勇気と力を持ち合わせている。

そんな時に心の助けになるのは、愛であり、支えであり、希望である。

今回の大震災の後、いろいろなものに対する見方や考え方が変わってきた。それはきっと私だけではないはずだ。

この大震災はいろいろな意味で"awake"(目覚め、気付き)をもたらしている。

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