2011.09.28(水)
先日メトの2011-12年シーズンがオープンした話を書いた。(こちら)
今シーズンのメトの初日は、メト初演となるドニゼッティ作曲の「アンナ・ボレーナ」であった。
多作であったドニゼッティは生涯70作品ほどのオペラを作曲しているが、「アンナ・ボレーナ」は1830年に作曲された、35番目の作品だ。
この作品でドニゼッティは国際的に大きな成功をおさめ、悲劇的なオペラの作曲家として名声を得た。このオペラはその後、半世紀ほど人気のあるオペラだった。
そして1957年にスカラ座でマリア・カラスが復活上演をさせ、再びレパートリーにお目見えするようになった。
タイトル・ロールの”アンナ・ボレーナ”役はアンナ・ネトレブコ。
人気・実力とともに最高峰の彼女が、どこまでこの役をものにするか。
オペラファンはワクワク、ドキドキものでこの日を待っていた。
そしてこの日、アンナ・ネトレブコは、この難しい役を確実にものにした。She nailed it!!

私がメト初演であるこのオペラを観たのは、もちろん今回がはじめて。
この演目が過去なかなか上演されなかったのも納得。これを上演するためには、まず歌える歌手がいないといけない。でも、こんなオペラを歌おうとは、よほどの覚悟と自信がないと歌えないだろう。だって本当に大変なんだもの。
歌も大変なんだけど、アンナ・ボレーナ役は、キャラクターの心理により、歌い方も変えないといけない、ときている。
ハイノートが何回か出てくるのだけど、1幕目と2幕目では、全く別人のように歌い分けなければならない。
それをアンナ・ネトレブコは見事に歌いわけた!!!
ストーリーはイギリス王ヘンリー8世と2番目の妻アン・ブーリンの実話をもとに作られている。ヘンリー8世と言えば、最初の妻キャサリンと離婚するため、ローマ教皇と決別し、英国国教会を設立した王。自分の離婚・結婚のために、国の宗教を変えた王様だ。ヘンリー8世はキャサリンの侍女であったアン・ブーリンと結婚。しかしその後はアンナからも心が離れ、不義を犯し、国王暗殺未遂というぬれ衣を着せられ処刑される。結局ヘンリー8世は合計6回も結婚。結局誰を選んでも、心から愛したり、人を信ずることのできない王であったようだ。
さて、オペラでは、ヘンリー8世がエンリーコ8世、王妃アン・ブーリンはアンナ・ボレーナとして登場する。
すでにアンナ・ボレーナに心はなく、彼女の女官ジョバンナに心移りしているエンリーコ8世。アンナ自身も国王の心が自分に向いていないことに気付いている。
彼女は王の心が自分にないことはよ~くわかっていた。なぜなら最初の王妃、キャサリンと王を彼女はずっと近くで見ていたから。キャサリンから王を略奪した時と同じ状況であったから。
その時のアンナの心は乱れ、怒り、恐れていた。
昔アンナが心惹かれていたペルシーが追放を解かれ、戻ってくる。王がアンナをはめようと策略したためだ。
国王の計略通りにアンナははめられ、彼との不義の罪をきせられ軟禁させられる。アンナは、不義を認め離婚をすれば命は救われると言われが、無実であるのに、命を不名誉と引き換えにはしないと断る。
そして国王の心変わりが自分の女官であるジョバンナであることを知るが、最初はジョバンナの裏切りを怒るものの、最後には悪いのは国王であると許す。
死刑の決定が下され、悲しみの余り錯乱するアンナ。過去の幸せだった頃を思い偲ぶ。が、処刑の合図で正気を取り戻し、処刑台へと進む。

とまぁ、こんな感じで、アンナの心はアップ アンド ダウンが激しい。
1幕目のハイノートは、ほとんど叫びに近い声をあげるが、2幕目の狂乱の場では、幸せだった頃を思い偲び、夢を見ているかのような優しい、ふわふわとした、現実と幻想の合間をさまよう一種狂気の世界を歌う。
この時のネトレブコは、ナタリー・デセィのルチアで見たような、正気と狂気の世界を全く演じ分けていた。
チャーミングだったのは、狂乱の場を歌い上げたネトラブコはそのまま目を閉じて観衆の割れるような拍手を聞いていたものの、長く続く拍手に、彼女はちょっとだけ薄目を開けて、小さくウインクしたこと。そう。この拍手はぜ~んぶ彼女のもの。そして彼女もそれを知っていた。そんな満足なウインクだった。
いやぁ、今年も最初からメトは飛ばしています。
このすごい舞台にさらにプラスだったのは、アンナをずっと恋い慕うペルシー役のスティーブン・コステロ。彼のペルシーがこれまたすごくよかった。実は私は、彼に目がくぎ付けだったのでした。

アンナをとにかくひたすら愛するペルシー。自分が破滅に向かっていようと、どんな状況であろうと、とにかく彼女しか見えないペルシー。
そんな役が、本当にはまり役。そして、その甘い声がまたよいのです。ちょっとこれからは彼の出るオペラは絶対見逃さないぞ、と心に誓いました。それ位よかった。
来週、このオペラはメトで観劇予定。
スクリーンで観るのと劇場で観るのとでは印象もまた違う。来週劇場で観るのが今から本当に楽しみです!
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今シーズンのメトの初日は、メト初演となるドニゼッティ作曲の「アンナ・ボレーナ」であった。
多作であったドニゼッティは生涯70作品ほどのオペラを作曲しているが、「アンナ・ボレーナ」は1830年に作曲された、35番目の作品だ。
この作品でドニゼッティは国際的に大きな成功をおさめ、悲劇的なオペラの作曲家として名声を得た。このオペラはその後、半世紀ほど人気のあるオペラだった。
そして1957年にスカラ座でマリア・カラスが復活上演をさせ、再びレパートリーにお目見えするようになった。
タイトル・ロールの”アンナ・ボレーナ”役はアンナ・ネトレブコ。
人気・実力とともに最高峰の彼女が、どこまでこの役をものにするか。
オペラファンはワクワク、ドキドキものでこの日を待っていた。
そしてこの日、アンナ・ネトレブコは、この難しい役を確実にものにした。She nailed it!!

私がメト初演であるこのオペラを観たのは、もちろん今回がはじめて。
この演目が過去なかなか上演されなかったのも納得。これを上演するためには、まず歌える歌手がいないといけない。でも、こんなオペラを歌おうとは、よほどの覚悟と自信がないと歌えないだろう。だって本当に大変なんだもの。
歌も大変なんだけど、アンナ・ボレーナ役は、キャラクターの心理により、歌い方も変えないといけない、ときている。
ハイノートが何回か出てくるのだけど、1幕目と2幕目では、全く別人のように歌い分けなければならない。
それをアンナ・ネトレブコは見事に歌いわけた!!!
ストーリーはイギリス王ヘンリー8世と2番目の妻アン・ブーリンの実話をもとに作られている。ヘンリー8世と言えば、最初の妻キャサリンと離婚するため、ローマ教皇と決別し、英国国教会を設立した王。自分の離婚・結婚のために、国の宗教を変えた王様だ。ヘンリー8世はキャサリンの侍女であったアン・ブーリンと結婚。しかしその後はアンナからも心が離れ、不義を犯し、国王暗殺未遂というぬれ衣を着せられ処刑される。結局ヘンリー8世は合計6回も結婚。結局誰を選んでも、心から愛したり、人を信ずることのできない王であったようだ。
さて、オペラでは、ヘンリー8世がエンリーコ8世、王妃アン・ブーリンはアンナ・ボレーナとして登場する。
すでにアンナ・ボレーナに心はなく、彼女の女官ジョバンナに心移りしているエンリーコ8世。アンナ自身も国王の心が自分に向いていないことに気付いている。
彼女は王の心が自分にないことはよ~くわかっていた。なぜなら最初の王妃、キャサリンと王を彼女はずっと近くで見ていたから。キャサリンから王を略奪した時と同じ状況であったから。
その時のアンナの心は乱れ、怒り、恐れていた。
昔アンナが心惹かれていたペルシーが追放を解かれ、戻ってくる。王がアンナをはめようと策略したためだ。
国王の計略通りにアンナははめられ、彼との不義の罪をきせられ軟禁させられる。アンナは、不義を認め離婚をすれば命は救われると言われが、無実であるのに、命を不名誉と引き換えにはしないと断る。
そして国王の心変わりが自分の女官であるジョバンナであることを知るが、最初はジョバンナの裏切りを怒るものの、最後には悪いのは国王であると許す。
死刑の決定が下され、悲しみの余り錯乱するアンナ。過去の幸せだった頃を思い偲ぶ。が、処刑の合図で正気を取り戻し、処刑台へと進む。

とまぁ、こんな感じで、アンナの心はアップ アンド ダウンが激しい。
1幕目のハイノートは、ほとんど叫びに近い声をあげるが、2幕目の狂乱の場では、幸せだった頃を思い偲び、夢を見ているかのような優しい、ふわふわとした、現実と幻想の合間をさまよう一種狂気の世界を歌う。
この時のネトレブコは、ナタリー・デセィのルチアで見たような、正気と狂気の世界を全く演じ分けていた。
チャーミングだったのは、狂乱の場を歌い上げたネトラブコはそのまま目を閉じて観衆の割れるような拍手を聞いていたものの、長く続く拍手に、彼女はちょっとだけ薄目を開けて、小さくウインクしたこと。そう。この拍手はぜ~んぶ彼女のもの。そして彼女もそれを知っていた。そんな満足なウインクだった。
いやぁ、今年も最初からメトは飛ばしています。
このすごい舞台にさらにプラスだったのは、アンナをずっと恋い慕うペルシー役のスティーブン・コステロ。彼のペルシーがこれまたすごくよかった。実は私は、彼に目がくぎ付けだったのでした。

アンナをとにかくひたすら愛するペルシー。自分が破滅に向かっていようと、どんな状況であろうと、とにかく彼女しか見えないペルシー。
そんな役が、本当にはまり役。そして、その甘い声がまたよいのです。ちょっとこれからは彼の出るオペラは絶対見逃さないぞ、と心に誓いました。それ位よかった。
来週、このオペラはメトで観劇予定。
スクリーンで観るのと劇場で観るのとでは印象もまた違う。来週劇場で観るのが今から本当に楽しみです!
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