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ヒューマン・ライツ・ウォッチ映画祭 「Unreturned」

今年もまたヒューマン・ライツ・ウォッチ映画祭(Human Rights Watch Film Festival)が始まった。

この映画祭は私が一番楽しみにしている映画祭だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはNGOで、人権監視団体とでも言ったらいいのだろうか。ヒューマン・ライツとは、人間が人間として生きるために与えられた権利と自由のことを言う。

この団体は、世界の人々の人権と尊厳を守るため、広範囲にわたって活動している。

彼らの活動の一環としてこの映画祭が毎年開催されている。今年は25カ国から30作品が選ばれ上映されている。そのうち28作品がニューヨーク初演作品なのだそうだ。

この映画祭で観た作品を序々に紹介していきたいと思う。


まずは「The Unreturned」。
unreturned_convert_20100618112020_convert_20100618112151.jpg

この作品はイラクの人々について、我々が知らされていない事実を収めたドキュメンタリーフィルムだ。

イラク戦争によって、4.7ミリオンものイラク人が住むところを失った。

そのうち40%のイラクのミドルクラスの人々が隣国のシリアやヨルダンに逃亡しており、その中でシリアが一番多く1.5-2ミリオン、ヨルダンで750,000ものイラク難民がいるのだそうだ。

unreturned-1.jpg

このフィルムは2008年にシリアとヨルダンに住むミドルクラスのイラク人を追ったフィルムだ。民族、宗教、職業の全く違うバックグラウンドを持ったイラク人5人の生活と生の声を描いている。

Abu Abbasはイスラム教スンニ派で、以前はバクダッドでレストランを経営していた。今はヨルダンの首都アンマンに暮らしている。ヨルダンに逃亡したとしても、難民としての証明書はあるものの、働く権利はもらえない。なのでもぐりでケータリングのビジネスをしている。彼の場合は、ある日アメリカ兵がやってきて、家を出るように言われた。その家はのっとられ、家具は誰かに持っていかれた。帰るところはもうどこにもないし、帰ったとしても殺されるだけだと言っていた。

NajlaaはMandean(宗教の名前)だ。イラク戦争が起こる2003年以前、イランには60,000人ものMandeanが住んでいたが今は5,000人しか残っていないそうだ。彼女は、イラクに住んでいた頃は病院でキャリアを持って働いていた。今はヨルダンでヘルスケアワーカーとして働いているが、通勤に何時間もかかり、賃金も低く働く条件は過酷だ。彼女は自分が好きで誇りを持ち、人のためになっていた前の仕事が忘れられない。それでもイラク難民の人々の力になろうとイラクのコミュニティセンターでも手助けをしていた。その彼女も語った。イラクに戻ったら、とても危険で帰れない。それどころか帰ったら殺されるだろうと。

今、イラクはミドルクラスのプロフェッショナル層の人々が40%も国外逃亡しているため、電気、きれいな水、衛生、ヘルスケアサービスと言った人間の生活に重要な職業の人たちに欠け、それが国の復興どころか、混乱をきたす深刻な原因となっている。

この映画の中で、この重要なプロフェッショナル層の人々が主にインタビューに答えていたが、どの人も全く同じことを言っていた。イラクには帰れないと。

ドキュメンタリーの中で誰かが言った。イラク人には3つの選択しかない。改宗すること(イスラム教)、もしくは3000ドルを払うこと。そうでなければ殺されるしかない。

それが「Unreturned」なのだ。家を追われた人のうちたったの9%の人たちしか戻っていない。

戻りたくないのではなく、戻れないのだ。


映画の中で、イラクの音楽がテレビから流れるシーンがあった。それを見て郷愁を感じたシェフの奥さんが涙ぐむシーンがあった。そのシーンを見て、隣に座っていた女の子も泣いていた。

この映画の後で、プロデューサー兼監督のNathan FisherがQ&A(質疑応答)に答えた。そこで私の隣の女の子がコメントを言った。彼女はなんとイラン人で、学生ビザでアメリカに来ているのだそうだ。

丁度前に、キリスト教のイラク人はキリスト教団体が面倒を見て各国に受け入れる協力をしたりしているが、イスラム教団体もそういうふうにイラク人のサポートができるのでは?というコメントが出ていた。それに対して彼女は、イスラム教団体に寄付をしたり、イスラム教のサポートをすること自体、テロリストではないかと疑いをかけられるため、そういう活動ができないのだ、と言っていた。

それにしても、公衆の前でイラク人と堂々と名乗る彼女に私は彼女にとても興味を持った。彼女はイラク人としてとても誇りを持っているのだと思う。そしてイラクの現状を人々にわかってもらいたいと思っているのだと思う。でなければ公衆の面前でこういう発言なんてできない。

イラク人としてアメリカに住むとはきっと楽なことではないと思う。テレビで、メディアで自分の国のことが毎日のように報じられる。それも決してポジティブはことではない。そしてメディアでは今日見たフィルムのような一般人については語っていない。

彼女は自分の国がどんな風にフィルムに捉えられているか、自分の目で見たかったのだと思う。ともするとイラク人=テロリストとみられがちな風潮がある中、本当はこうやって沢山のイラク人が祖国を離れ、苦しんでいることを伝えるフィルムを見て、思うところがあったのだと思う。だから皆の前で立ち上がって話しをしたのだろう。

この映画と、そしてイラク人の女の子との出会いとで、いろいろなことを考えさせられた夜だった。

Unreturned Trailer

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