Admin New entry Up load All archives
     

ヴェルディのスペクタル・オペラ 「ドン・カルロ」

先日、今年のメト新プロダクションの一つ「ドン・カルロ」を観て来た。

Don Carlo 3


これも今年楽しみにしていた演目のひとつ。

Directorはイギリス出身のニコラス・ハイトナー。「ミス・サイゴン」や「ヒストリー・ボーイズ」をプロデュースした人で、今はロンドン・ナショナル・シアターでDirectorをしている。

指揮者はYannick Nezet-Seguin。

「ドン・カルロ」はヴェルディが好む題材を満載したオペラだ。友情と自己犠牲、親子の関係、許されぬ恋愛、政治と宗教、国家と個人。複雑な要素がからみあう、スペクタル・ドラマだ。

その結果、「ドン・カルロ」をより完全な演奏形態にするため、沢山の改訂版が世に残る結果となった。

初演は1867年のフランス語版。同年イタリア語初演版が上演され、その後20年に渡り改正に改正が加えられた。

今回のメトで上演されるのは、イタリア語のオリジナル5幕版。上演時間4時間半ととても長いオペラだ。


大好きなヴェルディのオペラとあって、期待を胸にメトに出かけた。

今回のタイトル・ロール「ドン・カルロ」の役はロベルト・アラーニャが歌うことになっていた。ドミンゴやパバロッティに追従するテノールとして、随分と注目を浴びていたが、最近はちょっと不調気味であった。しかし、今回のアラーニャは違った。

Don Carlo 1

「ドン・カルロ」のストーリーは”ドン・カルロ”のストーリーというよりも、父帝の”フィリッポ王”や友人”ロドリーゴ”のキャラクターの方が断然面白く、重要なテーマが与えられている。だからこれらの役に押されがちになるのだが、今回のドン・カルロでは、アラーニャの存在感が大きく、登場人物として決してひけをとらなかった。

彼の伸びと艶のある声に、久々にうっとりとするようなテノールの声を堪能した。

ドン・カルロが、王子として国家と個人の狭間で悩むどころか、愛に直情するところとか、父帝の悩みを思いやる思慮のない短絡的なところとか、キャラクター的にとても合っていたように思う。

これは決して悪い意味でなく、例えばドミンゴがこの役をやると、本来の明るさが出てきてしまい、ドン・カルロの陰鬱さが表現されず、別物になってしまう。しかしアラーニャの演じたドン・カルロは、暗い部分をもつキャラクターの部分がなかなかあっていたと思う。

今回のアラーニャを見て、彼をそうとう見直した。何かが吹っ切れ脱皮したアラーニャ。これからがとても楽しみだ。


今回のプロダクションはロンドンのロイヤル・オペラ(2008年)とノルウェー・ナショナル・オペラの合作のもの。

フィリッポ2世役のFerruccio Furlanetto、ロドリーゴ役のSimon Keenlyside、エリザベス役のMarina Poplavskayaは同役をロンドンでも歌っている。

この3人がまたよかった。

フィリッポ2世は、いろいろなことに思い悩む深い役どころ。息子ドン・カルロの短絡的なところに思い悩み、新妻エリザベスが自分を愛していないことに憂う。これから国をどうしていくか、宗教との絡み、等々、複雑で重い役なのである。

その悩めるフィリッポ2世をFurlanettoはすばらしく表現していた。フィリッポ2世の独白のシーンでは彼の苦悩がひしひしと伝わってきた。

またロドリーゴ役のKeenlysideがよかった。ロドリーゴは理想が高く、気位があり、ドン・カルロへの献身的な友情、難しい性格のフィリッポ2世の心まで掴むという、切り口が沢山のマルチなスーパーボーイ。

この品格が伴われる役は、Keenlysideのはまり役であった。見た目も品があり、気高い姿勢、自分の信念を貫く感じがぴったり。ドン・カルロとの二重唱やロドリーゴがカルロに別れを告げるシーンなどは涙ものであった。

エリザベス役のMarina Poplavskayaもなかなかよかった。ちょっとぐらつくところはあったが、愛のない結婚をしなければならない若い王女をエレガントに表現していた。

ちょっと残念だったのはエーボリ役のAnna Smirnova。エーボリは、自分の美貌をたたえ、王様の愛人でありながら、ドン・カルロとの愛に破れ嫉妬する、クセのある強烈なキャラクター。私の好きなキャラクターである。

アイーダのアムネリスみたいな感じの役どころで、ソプラノを食ってしまうほどの役なのだが、残念ながら、そのダークさ、セダクティブさ、が足りなかった。

しかしこれだけのキャストを集めなければいけないのだから、「ドン・カルロ」がなかなか上演されないのもよくわかる。


ハイトナーの舞台はモダンでありながら、ヴェルディの音楽のカラーとマッチしたすばらしい舞台であった。

Don Carlo 2


このオペラを聴いて、改めてヴェルディのオペラっていいなぁ、と思った。彼のオペラは熱い。人が与えられた人生を一生懸命、精一杯に生きる、パッションを感じる。それが力強く音楽となって表現され、耳に響き、体にしみ込む。

見終えた後は、なんだかひとつパワフルになって、帰路に着く。そんな感じがする。


今のところ今年のメトはかなり飛ばしていて、今のところはずれがない。今シーズンの今後もとても楽しみだ。

**********************************************

ランキングに参加しています。
下の↓バナーをクリックしていただけると、励みになって嬉しいです!

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

人気ブログランキングへ

アイオワは雪でした。ものすごく寒いです。そして今日はロックフェラーの点灯式。TVの画面でいつも見ているロックフェラーを見るのはなんだかヘンな気持ちでした。えらくニューヨークが遠く感じます。


関連記事

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

コメント

アラーニャは素晴らしかったですね!性格の弱いところのあるドンカルロにまさに相応しい歌唱でした。ゲオルギューとのゴタゴタも取り敢えず落ち着いたようで、歌に専念できるようになったからでしょうか。今年1月、カルメンのドン・ホセも素晴らしいものでした。フランス人が歌うとこの役も一段と生き生きとしてきます。来年の1月に、またドン・ホセを歌いますが、こちらも楽しみです。

お久しぶりです。

>アラーニャを見て、彼をそうとう見直した。
成長したんですね、彼。(笑)

hih

Re: タイトルなし

Demeeさん、お久しぶりです!

大スター、ロベルト・アラーニャに対してちょっと偉そうな書き方しちゃってましたね(笑)。でもひと皮むけて、本当にすばらしい歌唱と表現力だったと思います。なのでちょっと興奮してしまったようです。あははっ。

こうやって歌手の変遷ぶりを見るのも、オペラファンにとっては楽しみのひとつです。

Re: タイトルなし

こんにちは。アルベージュさん、私もアルベージュさんのブログをいつも楽しみに拝見しています。なのに先日のコメントでは、いつも伺っているアルベージュさんからのコメントと結びつかず、とんちんかんなことを書いてしまいました。

ところで本当にアラーニャはよくなったと思います。技術的にも内面的にも磨きがかかって、今一番のっている、って感じでした。アルベージュさんのおっしゃるように、私生活のゴタゴタが落ち着いたのと、それを乗り越えたことで、人間的にも成長して、表現にもそういう内面的なところが反映されているんでしょうか。今までのアラーニャの中では、一番よかったように思います。

本当にこの役は彼のはまり役で、フランス人の底抜けに明るくない皮肉屋なところが、役としてあっていたように思います。今度はフランス語版で彼の歌声を聞いてみたくなりました。またオペラが別物になっちゃうんでしょうね。

オペラだぁ~

観に行って来られたんですね~
私もいつか、生??メト??
観てみたいです~

Re: オペラだぁ~

はい。またメトに行ってきました。

アンナさんの生メト・デビューも早くできるといいですね。


Secret

プロフィール

Sakura

Author:Sakura
マンハッタンを眺めながら、ニューヨークの出来事、映画、音楽、おいしいもの、旅の話などを徒然と綴ります。

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

最新記事

Twitter...

Categories...B

openclose

コンパクト月別アーカイブ

FC2カウンター

検索フォーム

リンク

ブロとも一覧


Mackdadyz Golf & Hot spring Blog ... Season 4 @Hokkaido ...

美肌ケアとニューヨークコスメ。

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR