Admin New entry Up load All archives
     

オペラって本当に奥が深い メトの新プロダクション、ラ・トラヴィアータ(椿姫)

去年メトが、ヴェルディの「ラ・トラヴィアータ(La Traviata(椿姫))」を新しいプロダクションにする、と発表をしてから、物議をかもし出していたが(これについての過去記事はこちら)、とうとう去年の暮れ、2010年12月31日にこの新しいプロダクションがお目見えした。

この新舞台は、2005年にザルツブルグ音楽祭でセンセーションを巻き起こしたもの。

今までのメトのラ・トラヴィアータの舞台は2代先までフランコ・ゼフィレッリのプロダクションであった。特に去年までのゼフィレッリのプロダクションは豪華絢爛できらびやか。幕が上がると、舞台に拍手が鳴るほどで、あまりの豪華さに残念ながら評判はイマイチであった。

でも、2005年のザルツブフルグ・バージョンの舞台がメトに来る、という発表があるやいなや、モダンで超シンプルな、ゼフィレッリとは対極にある舞台に、観る前からブーイングがでたり、ゼフィレッリのラ・トラヴィアータを見納めしようという人たちで、オペラが売り切れになったりちょっとした騒ぎになった。(私も見納めをした一人。その時の記事はこちら

そんな話題を振りまいてくれたラ・トラヴィアータの12月31日の大晦日の新プロダクション・デビューは、ブーイングもほとんどなく、なかなか好評であったようだ。特に、舞台にでてくるヴィオレッタの残された人生を象徴するかの巨大な時計と、大晦日のカウントダウンが重なり、功を奏したようだ。

LA Traviata 2-1


でも自分が好きかどうかは、自分で観て見なければわからない。とてもワクワクした気持ちで、年明け一番のラ・トラヴィアータを観てきた。

今回のこの舞台を観て思ったのは、演出により、同じオペラでもこんなに違ったものになっちゃうのね、ということだった。

まずオペラ座に入ると、カーテンもなく、白に近いブルーグレーの壁と半円の舞台が目に入る。そこには医者のグランヴィルが座っており、オペラが始まるまで、ずっと彼はそのままの姿で座っていなければいけない。舞台はそれだけ。
(通常はほとんど出番のないグランヴィルだが、この舞台ではヴィオレッタに常に彼女の死を警告するかのように、舞台のあちこちに登場する)

序曲が始まると、あっという間にラ・トラヴィアータの世界に引き込まれる。これほど耳になじんでいるオペラは他にあるだろうか?

私がオペラを聴き始めた頃、マリア・カラス版のラ・トラヴィアータをしょっちゅう聴いていた。その完璧なまでの歌声が、今も脳にしっかりと刻み込まれているため、ラ・トラヴィアータを聴くときは、どうしても音が気になってしまう。

今回の新しいプロダクションのラ・トラヴィアータは、ヴィオレッタのストーリーだった。

えっ、ラ・トラヴィアータって、ヴィオレッタのストーリーでしょ?と言われるかもしれない。でも今回のプロダクションは、とにかくヴィオレッタが中心となるように造られていた。

3幕を通して、女性の格好をして出てくるのはヴィオレッタだけ。(女中のアンニーナも女性の格好ででてくるが、ほとんどセリフ(歌)はない)

1幕のサロンのシーンでも、タキシードを着た群衆だけだし、
LA Traviata 7-1

2幕目のパリのサロンに戻った時の仮装舞踏会のシーンでもダンスのシーンはおろか、女性はいなくてヴィオレッタの赤いドレスを着けた男性が踊るシーンになっていた。3幕目にサロンの幻想を見るシーンでヴィオレッタの赤いドレスを着た美しい女性がでてくるが、それだけ。

とにかく女性はヴィオレッタだけという徹底ぶりで、この物語は、ヴィオレッタのストーリーであって、もっと言うと、物語の中心のヴィオレッタは、舞台が上がってから終わるまで死に向かっている、と明確に示している舞台であった。

舞台に設置された巨大な時計。これが彼女の残された人生を象徴している。

LA Traviata 1

気になったのは2幕目のはじめ。アルフレードが切々と二人の愛を歌うシーン。このシーンは通常、アルフレードがひとりヴィオレッタとの幸せな愛の日々を熱く歌うのだが、このシーンでは、ヴィオレッタとかくれんぼをしながら歌っていた。しかも舞台にはド派手なバラの模様がプリントされた布がかかったソファーをかくれみのに、ヴィオレッタとアルフレードは、下着の上にソファーのカバーと同じプリントのガウンを着て登場していた。

う~む、これはどういうものか。ちょっとこのシーンはいただけない、と思ったのは私だけか。

さて、この舞台、2005年にセンセーショナルだったのはよ~くわかる。全てをそぎ落としているので、歌手の力量と演技力が問われるようにできている。

特にヴィオレッタの物語なだけに、ヴィオレッタ役は大変だ。

まずヴィオレッタ役の歌手が美しくないと、この舞台はそれだけで台無しだ。いかに歌が上手くても、だ。

2005年のザルツブルグでヴィオレッタを歌ったのは、アンナ・ネトレブコ。この頃の彼女は本当に美しかった。

LA Traviata 9

ヴィオレッタ、そのもの。 (最近の彼女の舞台についてはこちらをどうぞ)

今回のプロダクションでも、アンナ・ネトレブコに主役の話があったそうだが、彼女が断ったそうだ。過去の自分と比較されるのはイヤだったのだろう。

で、白羽の矢が当たったのはMaria Poplavskaya。先日観たドンカルロでエリザベス役を演じた彼女だ。(ドン・カルロの舞台についてはこちら

ドン・カルロではあまり目立たなかったが、ラ・トラビアータでは光っていた。

細身の彼女は、ビジュアル的にも十分役を満たしていた。

一幕目の最後のハイノートは音を落としたし、グラつきはあったが、こんな過酷なプロダクションをこなした、という点ではその勇気とガッツに拍手を送りたい。とにかく彼女があってのこの舞台なので、そのプレッシャーは大変だっただろう。

アルフレード役のMatthew Polenzaniはとても良かった。彼のアルフレードは気品があり、アルフレードにぴったりだった。一幕目の半ばくらいから調子がでてきたようで、それ以降の彼の歌声は本当にラブリー。うっとりとしてしまった。

また、アルフレードのお父さんもとてもよかった。あのお父さんに息子をあきらめるよう迫られたら、NOと言えないだろうなぁ、という説得力ある歌声。

さすが一か八かの大きな賭けをしてこのプロダクションを持ってきたメト。キャストには万全を期していた。

この舞台を観て、あ~、解釈によってオペラってこんなに変わるのね~、とつくづく思った。何度も言うが、ラ・トラヴィアータはヴィオレッタのストーリには違いないが、こんなにも明確に彼女中心の舞台になると、他のキャラクターの出番がなくなってしまう。

私としては、ヴィオレッタに目を向けながらも、アルフレードの真っ直ぐで単純な性格に、オイ、コラッ、しっかりしろよっ、とか、お父さん、ヴィオレッタの語っていることの意味わかってる?なんて脇役にもわき目そらしながら観るほうが、キャラクターに深みがでてストーリーがより膨らんで楽しいように思う。

この舞台が世に出た2005年からすでに6年が過ぎている。当時センセーショナルだった舞台も、これだけ月日が経つと、斬新さが薄れる。メトにとっては大きな賭けであったこの舞台も(なんせしつこいようだが、前作がゼフィレッリの豪華な舞台)、実はザルツブルグで大成功したものというちゃんとした実証付きのものであって、勝算は十分にあると見込んだ賭けであった。

こんな鳴り物入りのプロダクションだったが、メトのロングランの舞台になるかどうかは疑問である。

まず、歌が上手く、スター性があることはもちろん、美しくて細いソプラノの確保が大変であろう。いかに最近美しく細いソプラノが多くなったとはいえ、この舞台で求められるのは、女優なみの美しさと演技力である。歌うだけでも大変な役なのに、それに加えて求めれられるものが高すぎる。

また解釈がとても明確すぎて、何度も観たい舞台か、というと、相当ソプラノが良くない限りまた観ようとは思わないかもしれない。

話題性も沢山あったし、こんな舞台もあるのね、と言うことを感じた、という意味では、とても意味のあるプロダクションであった。

2011年も熱いオープニングでオペラシーズンが幕を開けた。さぁ、これからがまた楽しみだ。

*********************************************

ランキングに参加しています。
下の↓バナーをクリックしていただけると、励みになって嬉しいです!

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

人気ブログランキングへ

れれれっ、こんな長文になってしまいました。まだまだ書きたい点があるほど。本当にオペラは奥が深いです。

関連記事

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

コメント

Secret

プロフィール

Sakura

Author:Sakura
マンハッタンを眺めながら、ニューヨークの出来事、映画、音楽、おいしいもの、旅の話などを徒然と綴ります。

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

最新記事

Twitter...

Categories...B

openclose

コンパクト月別アーカイブ

FC2カウンター

検索フォーム

リンク

ブロとも一覧


Mackdadyz Golf & Hot spring Blog ... Season 4 @Hokkaido ...

美肌ケアとニューヨークコスメ。

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR