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心が壊れれていく... ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」

ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」は、私の大好きなオペラのひとつ。

なんと言っても、あの狂乱の場がたまらない。マリア・カラスのCDで聴くこのシーンは、なんど聴いても魂が揺さぶられる。

もともと大好きなオペラではあったが、2007年にナタリー・デセイのルチアを観て、あまりの素晴らしさに、私まで狂乱しそうになった。

あんな舞台は今まで観たことがなかった。

あの時の舞台の話を書くと長くなるので止めるが、彼女の狂乱の場は圧倒的だった。目がうつろで、ふわふわとこの世と別の世界をさまよう姿。人の心がショックで狂い、崩れていくさまを目の当たりにした、すごい舞台だった。

もちろん彼女の歌は、マリア・カラスで慣らしていた耳ですら、引けを取らなかった。そんな鬼気迫る迫力ある舞台で、とにかく”すごい”、の一言だった。私はその年、2回も彼女の舞台を観に行った。

(興味のあるかたはこちらこちらと>こちらをどうぞ。デセイの2007年9月22日、METオープニング・ガラのステージです)

月日が経ち、彼女がまた「ルチア」で舞台に戻ってくる。そうとなれば期待せずにいられようか。

***

大震災の前、3月8日の舞台を観に行った。
Lucia 6

あれから1ヶ月以上も経ってしまったので、どこまで鮮明に覚えているかわからないが、備忘録として、思い出せる限り書きとめようと思う。

***

さて、今回のデセイはどうだったか。

3年前の彼女に比べ、声がトーンダウンしてしまった感は否めなかった。

前回の舞台の彼女は絶頂期で、声は本当にパワフルで、豊富な湯水がこんこんと流れ出るかのように、体中から溢れんばかりの豊かな声が延々と途切れることなく湧き出てくるかのようだった。

さらに彼女は女優もやっていたから、演技と歌の絶妙なタイミングと、ここまでやるか、というくらい、一つ一つの彼女の動きと歌が計算されつくして演じ歌っていた。

例えば狂乱の場では、ベールをちぎりながら歌うのだが、ちぎるタイミングが歌とは微妙にずれている。(先ほどあげたビデオの3つめ参照)ただでさえこなすのが難しい歌を歌いながら、ここまで微細にわたる演技。この人、普通じゃない。すごすぎる。とにかくありえない演技と歌で、鳥肌が立ちっぱなしだった。

今回のデセイは、それに比べ、すごくトーンダウンしたルチアだった。前回の舞台での1幕目のはじけるような若さと無垢な明るさは、もっと落ち着いたものに代わり、少し内向的な感じのルチアだった。
Lucia 1

彼女の声が変わったことを受けてなのか、それとも演出でそう変わったのか(でもタイムズでは、前回と全く同じ振りにしたと書いてあったから、やっぱり彼女の演技のせいか)はわからないが、少なくとも私にはそう感じられた。

前回のルチアと今回のルチアを比べると、歌唱では確かに前回のルチアのほうが勝っていた。あんな舞台は二度とは観られないだろう。

でも、ルチアという女性を考えた時、私の想像するルチアに近い人物像は、今回のルチアであった。

愛する男性と結婚の約束まで交わしながら、彼が裏切ったと騙され、家の存続のために別の人と結婚させられ、その結婚式で、彼の裏切りはウソで、でも自分は結婚の誓約書にサインをしてしまった... 
Lucia 2

絶望が彼女の心を引き裂く。そして現実と幻想のなかでさまよい、わからなくなる。
Lucia 4

こういう女性は少しトーンダウンした、内に強いものを秘めた女性像を想像するのだが、今回のルチアはそいう感じだった。前回のルチアは、ちょっと明るすぎて、こういう女性だったら、逆境も強くたくましく乗り切れちゃうんじゃないの?という感じがしたので、今回のほうがルチアに対する感情移入はすんなりとできたと思う。
Lucia 5

それから、キャスト。エドガルド役の Joseph Calleja。彼の伸びるような甘い声。とてもよかった!このオペラはテノールの出番が他のオペラと比べて少ないので、彼の歌声がもっと沢山聞けなかったのは残念なくらい。

ルチアのお兄さんEnrico役のLudovic Tézierも、レイモンド役のKwangchul Younもはまり役。今回はルチア以外の役もすべてが当たりだった。

これだけのキャストが揃っているというのは、本当にすばらしい。

***

大好きなルチアをもう一度観に行こう、と思っていたのだが、大震災が起こり、気が付いたらこの公演が終わってしまっていた。

デセイのルチアは、もしDVDになったら絶対に買おう!と心に誓っている。できれば2007年版(こちらはデセイの絶頂期版)と2011年版(脇のキャストも最高)と両方欲しい。


***

このルチア、愛している人と結ばれることができず、心に大きなショックを受けて狂ってしまい、最後には死に至ってしまう女性の話。いわば”愛死”のストーリー。私はこういうことってあるのか、と以前は懐疑的だったが、やっぱりこういうことってあるのかも、と思うようになった。

今回の大震災で、つくづく思った。大きなショックを受けた場合、心に受けた傷を癒すことは難しい。

一度大きなことを体験してしまうと、もう二度と同じ自分には戻れない。

人間の心って、繊細だ。

それでも大抵の人は、そこから立ち上がり、バネにして、立ち向かう勇気と力を持ち合わせている。

そんな時に心の助けになるのは、愛であり、支えであり、希望である。

今回の大震災の後、いろいろなものに対する見方や考え方が変わってきた。それはきっと私だけではないはずだ。

この大震災はいろいろな意味で"awake"(目覚め、気付き)をもたらしている。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメント

ええっ!あれでも!

こんにちわ。
いつも楽しく読ませていただいてます。
私はオペラサブスクライブ鑑賞3年目の新米なのです。
この間初めてルチアを鑑賞してナタリー デッセイ(先日パリで行われた東北大震災を援助するチャリティーコンサートでも歌っていたようですね)の可愛さ、前半の若々しさ、後半の幽玄さ、あんなに小さい体のどこからこんな声が、、、!

と心底圧倒されて帰ってきてネットで検索しまくった次第でした。

それでも2007年の公開当初の方が凄かったんですね!

想像できない、、、、。

今週はIl travatore,来週はValkrieです。楽しみ!

オペラの情報、いつも参考にさせてもらっています。これからも頑張ってブログ続けてください!

Re: ええっ!あれでも!

こんにちわ。

コメントありがとうございます。オペラ鑑賞3年目とは、楽しくってちょうどハマリはじめの頃ではないでしょうか。

ナタリー・デセイのルチア、METの舞台をご覧になられたのですね。彼女のルチアは最高です!こんなルチアはなかなか観られるものではないので、とても価値のあることだと思います。

2007年の舞台のことと比べてウンチクを書きましたが、私も、今年の舞台も十分に楽しみました。とくにキャストが全員いいのがすごい!あの舞台、もう一度観たかったです。

> 今週はIl travatore,来週はValkrieです。楽しみ!
ヴェルディとワーグナーですね! Il Trovatoreはレヴァイン指揮だし、ヴェルディらしい音楽で彼の世界にどっぷりと浸れます。Die Walkureは私も行きます!新しいプロダクションなので、とても楽しみです。観たら感想をアップしますね!

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