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ワーグナーに乾杯! オペラ「ワルキューレ」

オペラシーズンもあと残りわずか。

今シーズンのMETは本当にどれも素晴らしく、このままずっとシーズンが終わることなく続いて欲しいと切望するほど。

でもシーズン終わりになると、さらに目玉となるオペラがやってきて、オペラファンは嬉しい悲鳴をあげながらいそいそとオペラ座へ足を運ぶ。このシーズン最後を迎えた、ふわふわとした感じは、これはこれで好きな時のひとつではある。


待望のワーグナー(Richard Wargner)の「ワルキューレ(Die Walkure)」がいよいよ開幕となった。

Walkure 9


ワーグナーの大作「ニーベルングの指環」は、”序夜と3日間のための舞台祝典劇”と題されたオペラ。「ワルキューレ」はこの大作の第一日にあたる作品である。

今シーズンはじめに、序夜である「ラインの黄金」がMET新プロダクションでお目見えしてワーグナーに酔いしれた私は、早く次を観たくて観たくてたまらなかった。

そしてとうとう待ち焦がれていた「ワルキューレ」がやってきた。


上演時間は3幕で3時間50分。夕方6時半にはじまり、多少の遅れもあって終わったのは11時45分頃。それでもワーグナーの魔法にとりつかれた私には、あっという間の3時間50分であった。あ~、もう一回みたい!!


ワルキューレは「指環」の中でももっともポピュラーな作品だ。愛し合う男女と、愛の深さゆえに、人々(神々)の運命も変えてゆく。そして「ワルキューレの騎行」といった聴き所もある。

長いオペラではあるが、音楽にクリックすると本当に酔いしれたようになり、時間の長さが苦痛にならない。大丈夫かな、と思いながら、今回はAL君も一緒に観に行った。


まずは1幕目。

ずっと体調を悪くしていたジェームズ・レヴァインが、オーケストラ・ピットに入ると嵐のような拍手がなった。本当にワルキューレを指揮できるのか心配されていたが、彼の指揮で聴けて本当に嬉しい。

「ラインの黄金」に続いて今作もモダンな舞台。

木琴のようなプランクに嵐や雪などが映し出され、それがだんだん形を変え、フンディングの家に変わっていく。ハイテクを駆使した舞台。前作に引き続き、これらのプランクがガタン、ガタン軋む音が気になるのだけれど、まぁ、ちゃんと動いているのだから、この音は大目に見るしかない。

そしてジークリンデ(Mary Ann McCormick)とジークムント(Jonas Kaufmann)が登場。

Walkure 5


このジークムントのJonas Kaufmannが実によかった!!

最初の立ち上がりは声がガラガラだし声量もなく、対するジークリンデのMary Ann McCormickが声量たっぷりで押され気味に感じたのだが、Kaufmannの立ち居振る舞いは、私の想像するジークムントそのもの。きゃ~っ。なんてカッコいいの。オペラグラスで彼を追いまくって観てしまった。

そしてそのうち、声がスコーンと抜けてみるみるうちに魅力的な声に変身。いやぁ、彼はジークムントのために生まれてきたというか、ジークムントは彼であったのではないか、と思わせるようなはまり役。とにかく、彼の演技はジークムントそのものを見ているかのよう。

彼の声は多分METで、しかもこのようにオーケストラの音が大きいワーグナーを歌うにはギリギリの声量なのだと思う。でも声量が少ないからといって歌がまずいという訳ではない。彼のジークムントは、本当にアーティスティックなジークムントだったと思う。

私がもう一度このプロダクションを見たいのは、ひとえに彼のジークムントをもう一度観たいから。いやあ、本当に彼にくぎ付けでした。

ジークリンデのMary Ann McCormickもとてもよかった。さすがMet。キャストはばっちし。


2幕目で、ヴォータン(Bryn Terfel)とブリュンヒルデ(Deborah Voight)が登場。

Walkure 8

ヴォータン役のターフェルは前作からこの役を引き続き歌っている。ターフェルのヴォータンはジェームス・モリスで聴きなれているMETファンの我々にとってはちょっともの足りないように感じるかもしれないが、見た目はヴォータンぴったり。

でも今回一番輝いていたのはデヴォラ・ヴォイトのブリュンヒルデ。本当に素晴らしかった。

ヴォータンは、女神エルーダと通じて9人の娘を作った。その一人ブリュンヒルデは彼の一番のお気に入りで、父に忠実な娘であった。

2幕目でブリュンヒルデが登場し歌う、”ホーヨートーホー!ホーヨートーホー!(Hojotoho! Hojotoho!)”は勇ましく声も伸びがあり、力強い。

そしてヴォータンの妻、フリッカが登場。

Walkure 4

フリッカは婚姻を司る女神。

彼女はジークムントとジークリンデが恋に落ちたことに激怒している。この二人はヴォータンが人間女性に産ませた子たちで、兄妹であったのだ。しかもジークリンデは人妻であり、夫フンディングが「不倫」をフリッカに訴え、フリッカは、ジークムントを倒すことをヴォータンに迫る。(ヴォータンとフリッカには子供がいない)

このフリッカ役のStephanie Blythがまたよかった。彼女の役はなぜか終始椅子に座ったままであったのだが、とても存在感があり(体がデカイというだけでなく)、外で女を作り子供を孕ませるヴォータンに対する苦悩や怒りが座ったままなのに、明確に演じられ、歌われていた。存在感たっぷり。あんな風に迫られたら、どんなに強い男でも負けてしまうだろう。


フリッカにジークムントを倒すことを約束させられたヴォータンは、自分の息子であるジークムントのことを愛していた。しかしフリッカには逆らうことが出来ず、自分に忠実な娘ブリュンヒルデにジークムントを倒すことをゆだねる。

父の本音を知るブリュンヒルデは当惑する。

しかし父の命令に背くわけにも行かず、ジークムントのもとへ行く。

しかしジークムントとジークリンデの愛の深さに心を打たれたブリュンヒルデはヴォータンの命令に背き、ジークムントを守ることを決める。


フンディングとジークムントの決闘で、ブリュンヒルデがジークムントの加担しようとするも、ヴォータンがやってきて彼の剣(ノートゥング)を打ち砕き、ジークムントは倒れる。ブリュンヒルデはすばやくジークリンデを馬で連れ去る。


3幕目。

待ちに待った「ワルキューレの騎行」。これを生でAL君に聴かせたくて、この作品を一緒に観に行くことにしたのだ。

幕が開き、ヴァルキューレたちが「ホーヨートーホー」と歌って現れる。今回の舞台では、少しづつヴァルキューレたちが現れるのではなく、8人が全員横に並んでいっせいに登場する。

Walkure 6

この写真のように、プランク一つ一つが馬に見立てられて、シーソーのように前後を揺らしながら8人が横並びで出てきて、そのうち一人ひとりが滑り台のように下に落ちていくのだが...(そう、まさしくシーソーと滑り台のコンビネーション)

この演出はイマイチだった。というか、このプロダクションの中で見事滑っていたように感じた。

まずシーソーのようなギッコンバッタン。勇ましい乙女たちの表情をオペラグラスで見ると、怖がっているような人、ちょっと小ばかにしたような笑いをかみ殺しながらギッコンバッタン人などが見受けられた。

そして、ハプニング発生。

ステージ向かって左端にいたヴァルキューレがすべり落ちたとき、”ドスン”というものすごい音を立てて、滑り台と、ステージの狭間に落ちてしまった。かなりスピードを出して落ちるから、相当痛かったと思う。(音も本当にすごく響いた)

ステージ脇だったため、彼女は落ちた後、なんとかステージに這い上がり、すぐに袖に退場していった。

しばらくステージでは7人のヴァルキューレで歌っていたが、そのうち時を見計らって彼女がステージに戻ってきた。それを見たMETの聴衆は、こともあろうか彼女に盛大な拍手を贈った。(ALくんも拍手をしていた。)あのね~、気持ちはわかるのだけど、まだヴァルキューレの音楽が続いているんだよ~。こんなところで拍手したら音が聴こえないじゃないの~っ。

NY Timesによると、ブリュンヒルデのデヴォラ・ヴォイトも初演でプランクから滑り落ちるというハプニングがあったようだが、この舞台、かなりハラハラもののようだ。歌手達も命がけで舞台で演じなければいけないので大変だ。

この場面は興ざめ。

さて、ブリュンヒルデがジークリンデを抱えて登場する。ジークリンデは最愛のジークムントを失い、生きる希望をなくしているが、ブリュンヒルデに子供を宿していることを伝えられ、生きる決意をする。

彼女を一人逃がし、ブリュンヒルデは怒りまくる父ヴォータンと対峙する。

ブリュンヒルデは、自分の背信はヴォータンの真意を汲み取ったためだと訴えるが、背信は背信。処罰を与えないわけには行かない。

ヴォータンは彼女から神性を奪い、眠りにつかせる。ブリュンヒルデの願いで、周りに火を放ち、臆病者は決して近づけないようにはからう。

次作を暗示する”ジークフリートの動機”が反復され、横たわるブリュンヒルデが火に包まれて幕となる。
Walkure 7

実はこの最後の感動的なこのシーンの演出もちょっと?ものであった。

写真のようにブリュンヒルデのボディ・ダブルが逆さづり状態になるのだけれど、ヴァルキューレの二の舞のように滑り落ちたりしないだろうか、と余計な心配が働き、気が気じゃなかった。

このシーンでは、「ラインの黄金」で出てきたのローゲのテーマは流れるし、感動的なシーンなのに残念だ。このシーンでの炎はライトでの演出。ラインの黄金のような煙モクモクの演出のほうが、リアリティがあって個人的には好きだった。


しかしOver All、素晴らしい音楽、歌であった。ハイテクを駆使した舞台は素晴らしい!(特にオープニング)と思うところと、なんじゃこりゃ、というのに分かれていたが、これはこれで楽しめた。

そしてワーグナーは聴けば聴くほど新しい発見に溢れる。今回はライトモチーフが出てくるたびに誰を暗示しているのかが見えて、本当に楽しかった。ワーグナーがちりばめているトリックが少しづつわかりはじめた喜び。でも奥はまだまだ深く、入り口にようやくたどり着いたと言う感じか。

来シーズンの「ジークフリート」と「神々の黄昏」が今から楽しみでならない。


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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

コメント

今回の演出凄かったみたいですね~。(笑)

今後、Metがハリウッドやディズニーやイリュージョンの世界にならないことを願います。

Sakuraさんペースに戻りましたね。
4月はお忙しかったようで。
お疲れさまでした。

hih

お久しぶりです。

オペラシーズンだったんですね~
久々にSakuraさんの所にきて良かったです。
また、遊びにきますね~

Re: タイトルなし

こんにちは、Demeeさん。
今回の演出はかなりハイテクでした。

> 今後、Metがハリウッドやディズニーやイリュージョンの世界にならないことを願います。
Metの”魔笛”なんかはディズニーっぽくて私は好きではないのですが、保守的だったMetがようやくモダンで斬新的な舞台も取り入れだして、今丁度模索中の過渡期なんだと思います。それはそれでとても面白いです。

> Sakuraさんペースに戻りましたね。
鋭いコメントですね(笑)。まだ前のような内容に戻るには、ためらいと心理的抵抗があるんですよね~。一度何かを経験したら元に戻れないのは当然のことなので、これから私のブログもどう変化するか、自分でもわからないし、でも楽しみでもあります。

> 4月はお忙しかったようで。
> お疲れさまでした。
どうもありがとうございます。ようやく一息ついたところです。(まだ残務処理が続いてはいるのですが)
なのにオペラシーズンがもう終わり(涙)。(<-今シーズン最後のオペラについては近日中に書きますのでお楽しみに!)

Re: お久しぶりです。

アンナさん、本当にお久しぶりです。

どうしていらっしゃるのだろう、と思っていました。ブログを覗いていただいてありがとうございます。
お元気でしたか?

>また、遊びにきますね~
まだまだ書いていますので、お時間があったら見てください!
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