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113年ぶりの上演 メットのオペラ「ハムレット」

メットのオペラ「ハムレット」のシーズン初演に行ってきた。

「ハムレット」はメットで1884年に初演され、1897年を最後にずっと演奏されていなかった。100年以上の時を経ての再演、ということで楽しみにしていた。それもソプラノがナタリー・デセイ。去年の「ランメルモールのルチア」の狂乱の場でも彼女はすごい見せ場を歌い上げたが、「ハムレット」の狂乱の場はルチアでの狂乱の場よりもすごい、という前評判で、ワクワクしていた。

ところが今月の初め、体調不調のため、ナタリー・デセイが役を降りた。今期で「ハムレット」のオフェーリアを歌うのは最後にする、とデセイが言っていたため、2回観に行こうかと考えていた矢先のことであった。期待が大きかっただけにとても残念だった。

最近のメットはマーケティング力が強くなり、オペラファンの心を上手に操っている。オペラの宣伝の仕方も心得ていて、例えばハムレットなら”100年ぶりの上演” ”デセイの狂乱の場”が売り文句だった。それでチケットを売りつくしていたのだろうが、メインの歌手が出ないとなるとそれを期待していたファンは本当にがっかりだった。今シーズンは新プロダクション「カルメン」でも同様なことが起こった。出演者を売りにしているのに、キャストが変わってもチケットをリファンドすることができない。これは消費者の立場としてはちょっと不本意である...

さて、この「ハムレット」はどうだったかというと...

Metで上演されてよかった!

ハムレット役のサイモン・キーンリサイドがとても良かった!父王の死に疑問を持ち、苦悩するハムレットを素晴らしく表現していた。彼のはまり役である。
hamlet1-articleInline.jpg

オフェーリアのMarlis Petersenは彼女の勇気に拍手。ナタリー・デセイが役を降りた後、急遽この役を引き受けたのだが、ドレスリハーサルのあった12日(金)にはベネチアでパフォーマンスをしていたために参加できなかった。メットはコーチを送り、個別に彼女と役作りをしたそうだ。ニューヨーク入りしたのは翌日の土曜日。その後30時間に渡るリハーサル、コスチュームフィッティング、ピアノによるステージリハーサルと1回の短縮版のオーケストラリハーサルで16日(水)の本番を迎えたとのことだ。
18hamlet_CA0-articleInline.jpg

オフェーリアの役を演れる人は少ないはずだ。メットでも100年以上ぶりの再演である。しかもオフェーリア役が大変なのは、4幕目の狂乱の場のため。この幕はオフェーリアだけの幕なのだ。ハムレットに見捨てられたオフェーリアは、夢を見ているように幸せだった頃を回想し、それからふと現実に起こったことを思い出し、発狂していく。ここでドラマを盛り上げないと、最後の幕につながらない重要なシーンだ。ある意味、観客はこのシーンを観たさにこのオペラを観に行く。歌も本当に難しく、大変な見せ場である。こんなシーンがあるオペラを引き受けた彼女は本当にすごい。彼女の可憐で魅力的な声は、オフェーリア役にぴったりであった。彼女が引き受けたから今夜の舞台はあったと思う。

だだ、ナタリー・デセイの場合、彼女のパワーで彼女の見せ場のシーンは最初から観客を彼女に引き寄せる。物凄い吸引力がある。それが観れなかったのはやはりちょっと残念だ。

その他のキャストもよかったが、クラウディウス役のジェームス・モリス(バリトン)はちょっとがっかり。以前は彼が出ると主役を食ってしまうほどの存在感があったのだが(「トスカ」など、トスカでなくカバラドッシのストーリーになってしまうほど)、そのパワーが翳っていた。

オフェーリアのお兄さん役のトビー・スペンスはメットデビューであったが、とてもよかった。これからに期待する。

セットは1996年にジュネーブでデビューし、イギリスとバルセロナで使われたものをメットに持ってきたそうだ。シンプルでよく計算されて作られた舞台であった。

ところでこのオペラ、2つのバージョンがあるそうだ。一つは最後のシーンでハムレットが父王を殺し王座についたクラウディウスを殺し、自分が王座に着くシーンでおわるハッピー・バージョン。これはオリジナルでフランスでの初演で発表されたもの。もう一つがハムレットがクラウディウスを殺し、自分も自害するアンハッピー・バージョン。こちらはイギリスのコペントガーデンで上演する時に、ハッピーバージョンではイギリスでは受け入れられないだろうと書きかえられたもの。メットはこの二つのバージョンを合併し、終わりはアンハッピー・バージョンのものにした。シェークスピアがハッピーでは終われない、といったところか。
14hamlet_CA0-articleLarge.jpg

それにしてもフランス・オペラは甘美である。シェークスピアの悲劇もフランス・オペラになるとメロドラマになる。悲劇の中にも優雅さがあるのだ。

新しいオペラとの出会い。今シーズンのメットはいろいろあるが、こういう新しいオペラと出会える機会をもたらしてくれることに本当に感謝する。

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